相方のひと言

mixiに「俳句まみれ」というコミュニティがある。
そこでは毎日ひとつお題が出て、それに対して参加者が投句をするというシステムになっている。まさに「毎日が句会」である。
で、そこで先日出たお題が「明」だった(題は季語とは限らない、というか季語ではない場合がほとんどである)。「明」を入れた句で当季雑詠となるわけだが、これがなかなかうまく行かない。新年なので「明けの春」という季語を使う手もあるのだが、それではややわかりやすくて面白くない。ここは何かひとつひねってみなければ……と考えたのだが、それが素人の浅はかさ、そう簡単に出来るものではない。思いあまって、俳句の「は」の字も知らない相方に相談してみた。
「『明』のつく言葉で俳句に使えそうなの、何かない?」
「ん〜……『月明かり』とか?」
「今、そんなに月は明るくないんだよなぁ」
「じゃあ、『明星』」
「今の季節、金星って見えたっけ?」
「……。」
相談しておきながら、わがまま言い放題である。虚構句とはいえ、明らかな矛盾は言いたくないので、つい。
その後も相方は相方なりにいろいろ考えて「こんなのはどうだ」と句を作ってくれたりしたのだが、アイデアに繋がらず。
しかたがないので辞書をめくっていたら、「明烏」という言葉を見つけた。何となく雰囲気のある言葉だったので、少し考えてこんな句を作ってみた。

読初や終わりを告げし明烏

協力してもらった手前、報告しないわけにはいかないので、この句を相方に聞かせてみた。すると……
「どういう意味?」
「本を読み始めたらいつの間にか夜が明けてしまって、明烏の鳴き声で気がついた……って感じなんだけど」
「うーん……」
「何か、おかしいかな」
「もっと、リリカルにならない?」
「え?」
「本を読んでて夜が明けた、って、それだけのことだから……面白くない」
がーん。
今のスランプの3大原因のひとつ、「詩情の無さ」を思い切り指摘されてしまった。というか、俳句のことなど全く知らない相方に自分も気づかぬ「そのまんま」を見抜かれてしまうとは。かなりショックだった。


その後、「詩情、詩情……」とつぶやきながら頭を抱えてのたうちまわること数時間。どうにかこうにかひねり出したのが、

福引や明暗分けるひと回し

さっそく相方に聞かせたところ、ひと言。
「ようやくそれらしくなってきたね」
……く、屈辱だ……。初心とはいえ、俳句に足を突っ込んではや2ヶ月。それなりにセンスを磨いてきたつもりだったのだが……。というか、相方の詩的センスの鋭さには恐れ入るばかりである。あるいは、俳句を全く知らないからこそ、率直な見方になるのだろうか。ともあれ、さすがは我がパートナー、と惚れ直した夜であった。
結局、コミュニティには福引の句と、もうひとつ

初電車明るい方へ向かいたり

というのを投句してみた。残念ながら感想などはもらえなかったのだが、はたして出来のほどはどうであろうか。


あの時の
「もっと、リリカルにならない?」
というひと言は、今後作句する上で座右の銘にしたいと思う。